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投資詐欺で借金が膨らんだとき――家を守る前に考えたいこと

コラム

導入

「投資詐欺に遭って、借金が1,000万円を超えてしまった。でも、マンションだけは家族のために残したい」

こうした状況では、どうしても「自宅を守れるか」に意識が集中します。

しかし私は、この問題の本質は、家そのものを残せるかではないと考えます。

本当に守るべきなのは、家族がこれから無理なく暮らしていける生活です。

投資詐欺の被害者であること、自宅を失いたくないこと、子どもの進学を守りたいこと。どれも理解できる希望です。

ただ、それらを全部守ろうとして債務整理を先延ばしにしたり、新しい借入れを続けたりすると、かえって家族への影響が大きくなることがあります。

いま最優先すべきなのは、勝つことではなく、被害をこれ以上広げないことです。

相談事例

47歳の会社員男性。

妻と高校生・中学生の子ども2人と、夫婦共有名義のマンションで暮らしています。

3年前、SNSで知り合った人物から暗号資産の自動売買を勧められました。

最初は50万円程度の投資でしたが、画面上では利益が増えていきました。

本人は信用し、カードローンや消費者金融から借入れをしながら投資額を増やしていきました。

やがて投資サイトの残高は大きく増えましたが、出金しようとすると、

「税金を先に払う必要がある」

「保証金を追加しないと出金できない」

などと言われ、さらに借金をして送金。

結局、資金は戻ってきませんでした。

現在の無担保債務は約1,050万円。

一方、自宅マンションは約3,000万円の評価が見込まれ、住宅ローン残高は約2,600万円です。

マンションは夫婦各2分の1の共有ですが、住宅ローンは夫婦の連帯債務です。

本人は、

「自分だけ自己破産しても、妻の持分が半分あるからマンションは残せるのではないか」

と考えています。

さらに勤務先の持株を売れば約75万円になるため、それを住宅ローン半年分の返済に充てようとしています。

この問題の本質

私は、この問題の本質は「1,050万円の借金」だけではないと考えます。

問題は、

  • 借金を使った投資の経緯
  • 詐欺被害の証拠
  • 夫婦共有の自宅
  • 住宅ローンの連帯債務
  • 妻に隠している借金
  • 子どもの大学進学
  • 持株や保険などの財産
  • 税務上の確認
  • 今後の家計

が同時に動いていることです。

それにもかかわらず、本人は、

「詐欺だから自分は被害者だ」

という問題と、

「住宅ローンだけは払って家を守りたい」

という問題だけを見ています。

私は、ここで一度すべてを止めて、全体を見える化する必要があると考えます。

よくある失敗

このようなケースでよくある失敗は、守りたいものから先にお金を出してしまうことです。

たとえば、

  • 住宅ローンだけを先にまとめて払う
  • 家を守るために持分を妻へ移す
  • 教育費を守るため新しい借入れをする
  • 投資資金が戻ることを期待して債務整理を待つ
  • 会社での昇進を優先して半年間問題を放置する

といった行動です。

一つ一つには本人なりの理由があります。

しかし、問題が深刻になった段階では、良かれと思った資金移動が新しい問題を作ることがあります。

だから私は、焦って動く前に、まずお金の流れを止めます。

私ならどう考えるか

私なら、最初に三つのことを止めます。

  1. 新しい借入れ
  2. 持株75万円を使った個別返済
  3. 自宅持分などの財産移転

そして次に、投資と借金を一本の時系列にします。

たとえば、

  • いつカードローンから150万円借りたのか
  • その何日後にいくら投資先へ送ったのか
  • いつ出金できなくなったのか
  • その後さらにいくら借りたのか
  • 「税金」「保証金」として何を要求されたのか

を整理します。

ここで重要なのは、「詐欺だった」という結論だけを書くのではなく、本人がどう判断して借入れを増やしたのかまで整理することです。

「詐欺被害者だから大丈夫」とは限らない

本人が詐欺の被害者である可能性は十分あります。

しかし、それと、借金を使って投資を続けた事実は別の問題です。

出金できない状態になったあとも追加で借入れをして送金しているのであれば、その経緯も確認する必要があります。

私は、

「騙されたこと」と「その後の資金判断」

を分けて考えます。

被害者だったことを否定する必要はありません。

ただし、不利に見える事実を隠して「全部詐欺だったから問題ない」と整理してしまうのも危険です。

不利な事実ほど先に整理する。

これが重要です。

最善策

私は、このケースでは、

「家を残す方法」ではなく、「家族の生活を残す方法」を比較する

ことが最善だと考えます。

そのために、最低でも次の二つの生活案を作ります。

自宅を維持する案

住宅ローン、管理費、修繕積立金を支払いながら生活する場合、今後の教育費まで含めて家計が成立するのかを確認します。

自宅を維持したい場合には、自己破産だけでなく、一定の条件のもとで住宅ローンを維持しながらその他の債務を整理する個人再生等も比較対象になります。

住み替える案

マンションを維持しない場合でも、必ずしも転校しなければならないわけではありません。

同一学区内の賃貸住宅へ移ることで、学校や友人関係を維持できる可能性もあります。

重要なのは、

「マンションを残せたか」

ではなく、

「5年後も借金をせず、子どもの生活と教育を維持できるか」

です。

妻への説明を避け続けることはできない

このケースでは、妻への説明も重要です。

妻は単なる同居家族ではありません。

自宅持分の2分の1を持ち、住宅ローンの連帯債務者でもあります。

それにもかかわらず、本人は借金を約100万円程度だと説明しています。

実際には約1,050万円あります。

私は、妻への説明を「借金を告白する場」だけにはしません。

まず事実を整理したうえで、

  • 借金総額
  • 投資の経緯
  • 自宅への影響
  • 住宅ローン
  • 選択できる生活再建案
  • 教育費への影響

までセットにして共有する必要があると考えます。

夫婦関係を壊す可能性があるのは、借金の存在だけではありません。

嘘を重ねた状態が続くことも大きなリスクです。

教育費も「全部守る」から分解して考える

本人は、長女の県外大学進学費用をすべて負担すると約束しています。

長男についても今後塾に通わせる予定です。

子どもの教育を守りたいという気持ちは理解できます。

しかし私は、

「教育を守ること」と「親が費用を全額負担すること」

は別だと考えます。

今後は、

  • 進学先
  • 自宅通学か一人暮らしか
  • 奨学金
  • 授業料
  • 生活費
  • 本人の家計負担可能額

を分けて考える必要があります。

子どもの希望を否定するのではありません。

借金をしない方法で、できるだけ選択肢を残すという考え方です。

なぜ法律だけでは解決できないのか

自己破産が可能か。

個人再生が利用できるか。

住宅ローンはどうなるか。

投資損失が破産手続でどう評価されるか。

こうした法律問題の確認はもちろん重要です。

しかし、法律上の手続を選ぶだけでは生活は再建できません。

家を残しても教育費で再び借りるなら、問題は続きます。

破産しても、妻に事実を隠し続ければ家族関係は立て直せません。

投資詐欺の資金回収ばかりを追い続けて債務整理が遅れれば、借金問題は悪化します。

だから私は、

「どの法律手続が一番有利か」

だけではなく、

「どの方法なら家族がその後も暮らしていけるか」

で判断します。

実務上のチェックポイント

私なら、まず次の項目を確認します。

  • 全借入先と残高
  • 最終借入日・最終返済日
  • 投資に送金した総額
  • 借入金から投資へ流れた金額
  • 出金できなくなった時期
  • 追加送金を求められた記録
  • SNSのメッセージ
  • 投資サイトの画面
  • 暗号資産の送金履歴
  • 妻名義の家族カード利用
  • 勤務先持株の評価額
  • 生命保険の解約返戻金
  • 車の時価
  • マンションの正確な査定
  • 夫婦それぞれの持分
  • 住宅ローン契約
  • 住宅ローン残高
  • 今後の教育費
  • 住み替えた場合の家賃
  • 暗号資産取引の税務上の確認

そして、これらを別々に見るのではなく、一枚の生活再建計画につなげることが重要です。

まとめ

投資詐欺で借金が膨らんだとき、

「自分は被害者だから、何とかなるはずだ」

と思いたくなる気持ちは理解できます。

また、

「家だけは子どものために残したい」

という気持ちも自然です。

しかし私は、最初からその二つを前提にはしません。

まず、新しい借入れを止める。

個別の返済や財産移転を止める。

投資詐欺の証拠を保存する。

借金と投資のお金の流れを整理する。

自宅を維持する場合と、住み替える場合を比較する。

妻と事実を共有する準備をする。

そのうえで、破産や個人再生を含めた方法を選びます。

重要なのは、マンションを残せたかどうかではありません。

借金を増やさず、家族がこれからも生活していける形を残せたかどうかです。

私は、このケースでは「家を守る」のではなく、家族の生活を守ることを最優先に考えます。

免責文

※この記事は、投資詐欺、自己破産、住宅ローン、夫婦共有不動産、教育費などが重なったケースについて、実務上の考え方を整理した一般的なケーススタディです。実際の破産手続、個人再生、住宅資金特別条項、投資損失の評価、財産の取扱い、税務上の判断などは、具体的な契約内容、時期、財産状況、資料、申立先の運用等によって異なります。本記事のみをもとに個別の法律判断を行うものではありません。

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