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高齢の親がSNS投資詐欺に巻き込まれたとき、最初に守るべきもの

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導入

高齢の親がSNSで知り合った相手にお金を送っていた。

しかも本人は、まだ相手を信じている。

こういう場面では、家族は強い怒りと焦りを感じます。

「すぐにスマホを取り上げたい」
「通帳と印鑑を預かりたい」
「相手を捕まえて、お金を取り返したい」

そう考えるのは自然です。

ただ、私はこの問題で最初に優先すべきなのは、親を責めることでも、家族が力ずくで管理することでもないと考えます。

最初に守るべきなのは、追加被害を止めながら、親が支援を拒まない関係を残すことです。

相談事例

ある日、48歳の女性が相談に来られました。

お母様は79歳。一人暮らしで、最近少し物忘れが増えています。

相談者は、落ち着かない様子でこう話しました。

「母がSNSで知り合った男性に、お金を送っていたんです」

相手は、海外在住の日本人男性を名乗っていました。

「あなたと老後を過ごしたい」
「日本に帰る前に資金を増やしたい」
「二人の将来のために投資しよう」

そう言われ、お母様は最初に30万円を送金しました。

その後も、相手からは次々と連絡が来ます。

「利益が出たけれど、出金には税金が必要」
「口座が凍結された」
「解除するには保証金が必要」

気づいたときには、合計で約420万円を送金していました。

相談者が問い詰めると、お母様はこう言いました。

「あの人は詐欺師じゃない」

「娘が邪魔しているだけ」

「私のお金をどう使おうと自由でしょ」

さらにスマートフォンには、相手からこんなメッセージも届いていました。

「娘に言うな」
「家を担保にすればもっと増やせる」
「今やめると全額失う」

相談者は、すぐにスマートフォンを取り上げ、銀行口座も止めたいと考えました。

ところが、問題はそれだけではありません。

弟が突然、こう言い出したのです。

「姉が母を放置したからこうなった」

「俺が通帳と印鑑を預かる」

「施設費用が必要になる前に、家を売った方がいい」

しかし弟には過去に借金があり、お母様から借りたお金を返していない事情もありました。

相談者は、弟にも通帳を触らせたくありません。

一方で、お母様の自宅には段差があり、最近転倒しかけたこともあります。夜に一人で外出しているという近所の話もあります。

相談者の家に引き取る案もありますが、長女は大学受験を控えており、夫も「今の家では無理」と反対しています。

相談者は最後に、こう言いました。

「母のお金を守りたいんです。でも、母は私を敵みたいに見ています。どう動けばいいのでしょうか」

この問題の本質

私は、この問題の本質は「詐欺被害」だけではないと考えます。

もちろん、送金先を調べること、証拠を保存すること、金融機関や警察、消費生活センターにつなぐことは重要です。

しかし、それだけでは足りません。

このケースでは、次の問題が同時に起きています。

お母様が今も相手を信じている。
追加送金の危険がある。
判断能力の低下が疑われる。
一人暮らしの安全に不安がある。
弟が財産管理に介入しようとしている。
自宅売却や介護の問題も迫っている。

つまり、単に「詐欺師を追う」だけでは解決しません。

親のお金、判断能力、住まい、介護、家族関係、今後の生活を一体で考える必要があります。

よくある失敗

このような場面でよくある失敗は、家族が感情的に動いてしまうことです。

たとえば、親に向かって、

「だまされているに決まっている」
「なんでそんなことも分からないの」
「もうスマホは取り上げる」

と言ってしまう。

気持ちは分かります。

しかし、本人が相手を信じている段階で強く否定すると、親は家族ではなく詐欺相手の方を信じてしまうことがあります。

スマートフォンを隠す。
通帳を見せなくなる。
「娘に財産を取られる」と周囲に話す。
弟や別の親族を頼る。

こうなると、かえって支援が届きにくくなります。

また、きょうだい間で「自分が管理する」と争うのも危険です。

財産を守るための話が、いつの間にか「誰が通帳を握るか」という争いに変わってしまうからです。

私ならどう考えるか

私なら、最初に追加被害の防止を考えます。

ただし、力ずくでスマートフォンや通帳を取り上げることは、原則として避けます。

まず確認するのは、次に送金する予定があるかどうかです。

「次はいつ払うことになっているのか」
「いくら必要と言われているのか」
「どの口座に振り込むよう言われているのか」

ここを確認しないまま説得だけしても、追加送金は止まりません。

同時に、証拠を保存します。

SNSのやり取り。
送金明細。
振込先口座。
暗号資産サイトの画面。
相手のプロフィール。
「娘に言うな」「家を担保に」というメッセージ。

これらは、後から確認できる形で残しておく必要があります。

次に、お母様の判断能力と生活安全を確認します。

物忘れがいつから始まったのか。
銀行で暗証番号を忘れたことがあるのか。
夜間外出はどの程度あるのか。
転倒や火の不始末はないのか。

詐欺被害の問題と、認知機能・介護の問題は分けて整理する必要があります。

最善策

私が最善だと考えるのは、追加被害を止めながら、お母様が支援を拒まない関係を残すことです。

お母様を責めない。
相手を信じてしまったことを笑わない。
いきなり通帳を奪わない。
スマートフォンを強制的に取り上げない。

そのうえで、金融機関、消費生活センター、警察、医療・介護の窓口につなげます。

ここで大事なのは、目的を分けることです。

金融機関には、追加送金防止と送金先口座の確認。
消費生活センターには、詐欺被害の整理。
警察には、被害の記録と今後の危険性。
医療・介護の窓口には、判断能力と生活安全。

そして、財産管理については、家族の誰かが感情で握るのではなく、必要に応じて成年後見、保佐、補助などの制度を検討します。

弟を完全に排除したい気持ちは理解できます。

しかし、感情的に「近づくな」と言うだけでは、きょうだい対立が激しくなります。

私なら、弟には「誰か一人が通帳を持つ」のではなく、「支出は記録し、共有する」という方向で話を組み立てます。

なぜ法律だけでは解決できないのか

この問題は、法律だけでは解決できません。

なぜなら、お金を取り戻すことだけが目的ではないからです。

本当に守るべきものは、これからのお母様の生活です。

追加送金を止めること。
住まいの安全を確保すること。
介護につなげること。
判断能力を確認すること。
家族の対立でお母様を孤立させないこと。

たとえ詐欺被害の一部を回復できたとしても、その後また別の相手に送金してしまえば、問題は終わりません。

また、家族が強く介入しすぎて、お母様が支援を拒むようになれば、さらに危険です。

重要なのは、誰が正しいかではなく、これからの生活を守れるかです。

実務上のチェックポイント

  • 次に送金する予定があるか
  • 送金先口座、日付、金額を一覧化できるか
  • SNSやメッセージの証拠が残っているか
  • 暗号資産サイトのログイン情報が分かるか
  • 「家を担保に」といった危険な指示があるか
  • 通帳、印鑑、キャッシュカードの所在が分かるか
  • 物忘れや判断能力低下の具体例があるか
  • 転倒、夜間外出、火の不始末など生活上の危険があるか
  • 弟が財産管理を求める理由と背景は何か
  • お母様が誰の話なら受け入れやすいか
  • 自宅に住み続ける場合の安全対策は可能か
  • 介護認定や見守り体制につなげられるか

まとめ

高齢の親がSNS投資詐欺に巻き込まれたとき、家族が怒るのは当然です。

「なぜ信じたのか」と言いたくなる気持ちも分かります。

しかし、私は、この場面で最初に必要なのは、親を責めることではないと考えます。

最優先すべきなのは、追加被害を止めること。

そして、親が支援を拒まない関係を残すことです。

そのためには、証拠を保存し、送金予定を確認し、金融機関や公的な相談窓口につなぎ、医療・介護面も同時に確認する必要があります。

短期的には追加送金を止める。
中期的には判断能力と財産管理を整理する。
長期的には住まいと介護の体制を作る。

この順番で考えることが大切です。

いま最優先すべきなのは、誰かを責めることではありません。

被害を広げず、お母様のこれからの生活を守ることです。

私は、それがこのケースの最初の一手だと考えます。

免責文

この記事は、個人の法律・生活問題についての一般的な考え方を整理したものです。具体的な事案では、事実関係、証拠、家族関係、判断能力、財産状況、介護状況、相手方の対応によって判断が変わります。本文は特定の結論を保証するものではありません。

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